狭き門を行け
ユートピアに出てくる歌詞「狭き門を行け」英語にすると「enter by the narrow gate」
私も教えてもらうまで存じ上げなかったのですが、これって聖書に出てくるお言葉だそうで。数年前から温めてた言葉が歌詞に登場して、おぉーと思った方も多いことかと。
マタイによる福音書7:13-14
「狭い門から入りなさい。破滅に通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。」
困難を伴う道を選べなんて、なんともストイックな稲葉さんらしい言葉だとしみじみ。でも、こういうフレーズを歌詞に使ってくるのはちょっと意外に感じます、なにか共鳴するものがあったのかもしれない（教えてくれなそうだけど）
いいなーと思うのはこの言葉がユートピアのサビの歌詞ということ。「理想郷」それは絶対に存在しない場所・たどり着けない場所という意味もある。月日を経てチョイスする言葉が時代や感情や経験によって少しずつ変わっていったことが伺えますが、そんな変化を楽しめるのも25年という決して短くはない時間を重ねていったからこそ*1。止まることなく歌い続けてきた結果のひとつなのだなぁーと嬉しく思う。
せっかく聖書の話題が出たので「神様」という単語が出てくる曲を思い浮かべてみても*2。
君が悲しまなければ 神様に嫌われても 譲りたくない
/Stardust Train(1990年)
この場合の神様は道徳心という意味合いが強いか。
信じる者しか救わないせこい神様拝むよりは 僕とずっといっしょにいる方が気持ちよくなれるから
/愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない(1993年）
有名どころですが、とんがってますね。
電話が鳴り出した 神様に祈る
/ブルージーな朝(2003年)
神頼み。
無限の可能性 未知の未来 神さえ予測不能 己が今を変える
/X(2005年)
神頼みじゃなくて自分で人生切り開いていけよ的な。
神さまなら たぶんね そんなに多くのこと 求めちゃいないよ
/ゆるぎないものひとつ(2006年)
この「さま」がひらがななのがポイント。
神様がいるなら 感謝したいよ (どうも ありがとう!)
/national holiday(2008年)
誰かに感謝したい1日。そういう瞬間は確かにある。
祈れど神にゃたよれないよ
/ロンリースターズ(2009年）
これはXに通じるカンジ。
ただ、単語にとらわれずに全体を見ると、主題としては政治的なものよりもずっと少ないのよね。CIRCLEとかBURNはテーマがテーマなので割と仏教っぽい印象を受けるし。（あ、念のため言っておくと私としてはB'zさんがどんな信仰持ってても出てくる音楽だけしっかりしてればどうでもいいです。どのみち私B'z教だし。）
そして、ここからは稲ソロの歌詞*3ソロの方が変化が分かりやすいかも。そして、B'zとソロにおける稲葉さんなりの言葉の使用基準の線引は興味深いものがあります。…が、その話はまた脱線しちゃうのでまた次の機会にでも。
どんな神様にも救えない 僕の魂は僕の 君の魂は君の言うことしか聞かない
/Soul Station(1997年）
わかるもんじゃない そうは簡単に 人の気持ちなんて ねぇ? 神様 ねぇ?
/とどきまうように(2002年）
神様でもいそうな 気配がして思わず電話したくなった
/The Morning Call(2010年)
反発すら覚えていた万能の神というイメージが徐々に共感や感謝する対象へ軟化していったような気がする。ただ、稲葉さんの歌詞の場合あくまで詩じゃなくて歌詞なんだからここだけ取り出してアレコレ言っても伝わらないのだけどもねー前後の文脈や音楽って大事。
参考までに相方の松本孝弘さんの場合
神様 守って!あおく輝く命を! 神様 おねがい!この痛みもう少し和らげて
/神様へ(1999年）
そのものズバリな題名ですねｗ松本実家がクリスチャンであることはだいぶ前から御本人が公言してますが*4、「神様助けて!」「神様教えて!」という歌詞を見るからに松本さんにとって神様という存在は絶対的な守ってもらうもの、頼るもの、縋るものという印象があるのだろうと思います。松本さんの作詞はだいぶ御無沙汰なので変化は見てとれないけど。
ということで、同じグループでも言葉の使い方は違うし、同じ人でさえ言葉の使い方は変わってゆくよねってお話でした。こういう経年美化ってはたから見てると面白いから、自由・生まれ変わる・幸せ・ぬくもり・正義・絆・正解・・・あたりを誰かちょちょいとまとめてやくれないかしら（他力本願）
