さいごの毛布
犬は昨日を愛する生き物ね。今日も昨日と一緒であればいいと思っているの。
- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/03/26
- メディア: 単行本
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馳星周や樋口明雄、小川洋子などと同じく、この人の出てくる犬の話はそんなに大きく道を外れることはない…という信頼感があったので、そのあたりは安心して読めました*1。
老犬というからに、生と死がテーマかと思えば、その点あんまり大きなウエイトは占めない。が、この「老犬ホーム」というあまり認知度の高いとは言えない場所を選んだことによって人間よりもシンプルな家族小説に。犬を飼い続けることが出来なくなってしまった人が、高額なお金を払い世話をしてもらう老犬ホーム。犬を飼い始めるのも人間の勝手ではじまり、犬を飼い続けられないのも人間の勝手・・・人の都合に振り回される犬、理由を理解できない犬。でも、捨てられてたり保健所に連れて行かれるよりも、ずっと彼らは恵まれている。でも、恵まれていることは幸せなんだろうか?幸せってなんなんだろうか?
この仕事があることで、犬と飼い主との間に、選択肢がひとつ増えるの。
老犬ホームという存在を悪でも善でもなく、中立なフェアな視点で書いている点に好感が持てる。ブランケットへやってきた犬にもブランケットで働く人にもそれぞれの事情がある。著者お得意のミステリーのような不穏さも持ち合せ、ぐいぐい読ませる力がありました。そして、最後は非常に暖かい気持ちで本を閉じることが出来る、希有な本でした。
犬好き、とくにパピヨン好きにはお勧めですの*2。
犬は愛してくれた人のことは絶対に忘れませんよ。
さらりと言ったこの台詞に思わずグッときたり。
犬を飼えないから処分したなんて言うと、モラルが無い人としてみんなから糾弾されるような社会になればいい。動物の命が、飼い主の環境や気持ちひとつで決まるなんて理不尽だわ。
こういう草の根のような活動が、少しずつよい方向へ導いてゆくと信じて。
*1:逆この人の書く犬はいつも薄っぺらだと思う方もいる…名前は出さないけれど
*2:個人的には