野良犬トビーの愛すべき転生
dogs with a mission
- 作者: W.ブルースキャメロン,W.Bruce Cameron,青木多香子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/06/27
- メディア: 文庫
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犬の登場する本はやっぱりフチ*1やバーブル*2やアンティス*3などのノンフィクションに限るわ〜となってた最近では久しぶりのヒット。これは、アインシュタイン*4やアーモンディン*5に匹敵するような犬が主役の小説。転生する犬トビーの目線で語られる人間社会。そして犬の使命。
レト好き、シェパ好き、なにより犬好きにはたまらん内容!
ネタバレるよ。そして好きな犬作品をつなげてみたよ。
犬の一人称で語られる物語、輪廻転生のリピートものというのはともすれば徒労感を伴いがちなものですが、この本は着実に近づいてゆくのが判ってワクワク。裏のあらすじを読んで警察犬に転生したトビーが元・飼い主のイーサンを救いに行くんでしょ?なーんてベタな予想がいい意味で裏切られて嬉しかった。生き生きとした犬たちの描写は楽しく、そして人間に翻弄され生殺与奪の権を人間に委ねざるを得ない犬の立場に切なくなって人の責任を考えさせられる。
日本人だとより輪廻というテーマは受け入れられやすいかもしれない*6。でも4回の転生のうちにほとんどが最後が安楽死で終わるのは(トビーは楽ではなかったけど)日本人にはあまり馴染まないかもしれない。
一番すきなのはやっぱりベイリーの章。ゴールデンレトリバーのベイリーがイメージしやすかったこともあるだろうけど*7、少年と犬ものっていうのはやはり今も世界の王道*8。だってどれも素晴らしいもの。「いい子」「ドジな子」というイーサンの愛あふれる言葉はベイリーじゃなくてもグッと来る。ラストのフリップの複線は判っていても胸に迫る。
犬の一人称といえば、忘れていけないのがディド*9とかボーイ*10、日本だとドン松五郎*11の存在ですが、その頃と比べて犬の心理学はだいぶ進んでいるんだなぁと妙な感心をしました。「犬を擬人化してはいけない」しつけ教室やしつけの本でで良く使われる言葉です。犬は人ではない、しかし犬は機械でもない。犬は犬でしかない。そういう犬本来の目線からの本が増えてきたように思います。たとえばジャック*12。それはジーン・ドナルドソン*13やシーザー・ミラン*14の草の根のような活動の成果なのかも。(それはそれ、これはこれと区別すれば両立してゆくことは出来るから個人的にはそのほうが面白いとは思うけれど。)
ひとつだけ気になるのは新潮文庫の表紙がラブラドールのパピーだった点。
イエローのラブラドールには転生しないのになー原書はブラックラブなのに・・・
- 作者: W. Bruce Cameron
- 出版社/メーカー: Forge
- 発売日: 2011/05/24
- メディア: ペーパーバック
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本を閉じて、ベイリーにとってのイーサンのような存在になれるように私は今日も犬と生きるわけです。
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*13: ザ・カルチャークラッシュ―ヒト文化とイヌ文化の衝突 動物の学習理論と行動科学に基づいたトレーニングのすすめ
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