マージ、マージ、マージ
馳星周といえばハードボイルド。
B'zファンの私はもちろん不夜城の映画は見ました*1原作の本も読みましたし、勢いに乗って不夜城2-鎮魂歌-まで読んでいたりします。まぁ、ファンってほどではないんだけれど。で、そんな馳星周が本を出したとな。しかも犬本。きっと狂犬とかのまたずげぇハードなやつかと思いきや意外に本気の愛犬本。
えぇー馳星周の愛犬?きっとグレートデーンとかドーベルマン、シェパードとかのでっかい犬か、もしくはピットブルとかロットワイラーみたいな結構ごっつい系の犬じゃないの?と思ったらこれも大間違い。
バーニーズマウンテンドッグ。これ。
- 作者: Nikki Riggsbee,Pam Tanzey
- 出版社/メーカー: Barrons Educational Series Inc
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: ペーパーバック
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この本は馳星周の日記サイト軽井沢日記から抜粋したもので、彼の愛犬Margery(通称マージ)との日記であり、切ない恋文であり、最期までの闘病記。
バーニーズについて詳しくなかったんだけれど、やはりこの犬種も遺伝子プールが少ない*2ことから短命な犬種とのこと、純血種と暮らす限り犬種のウィークポイントは避けては通れない話なのです。
3歳までは幼犬、6歳までは良犬、9歳までは老犬、10歳からは神様の贈り物
日記形式で話は進み全編にわたって苦しいほどの深い愛情がつづられています。マージ、マージ、マージ何度書いてあるんだろう?語りかけるように、祈るように繰り返される犬の名。基本的にワタクシ、本とか映画とかで泣くことないんですが、珍しくすでに開始30分ぐらいからずっと涙腺が危険な感じでした。是非、多くの人に読んで欲しい。これから犬と暮らしたい人、犬と暮らしている人、犬を介護している人、犬を亡くした人。いや、犬を飼っていなくとも。犬だけに限らず家族の介護中の人にも。
生きていれば必ずやってくる老いと真正面から向かい合うために。
マージの状態が悪くなっていくと生活の中心がマージになってくる。それを馳星周と奥さん、弟バーニーズのワルテルがみんなで支えてゆく姿は本当に壮絶。睡眠時間はこま切れだし犬の食事がケーナインと馬の心臓とか羊のひき肉とかの凝った食事なのに人間の食事はコンビニのうどんだったりする。大型犬なので移動するのも一苦労で床ずれを心配して何度もマッサージをする。人間もそうだけど、どんどん死に近づいてゆくのが手に取るように分かる。題名の通りはじめのうちは走ることもできたマージが散歩はおろか歩けなくなり、立てなくなり、排泄も自分ではできなくなってくる。命の灯が消えてゆくように出来ない事が増える、でもその中で昨日良い部分に無邪気に喜ぶ。なんだか自分の祖母の時を思い出して辛かった。永遠の淵に立っているのだと気づく時が。
本当にここまでの介護ができる自称犬好きはどれぐらいいるんだろう?
世の中には犬の最期を見たくないからという訳のわからない理由で*3保健所に犬をつれて行く人がいるというのに。そしてそんな飼い主を選べないわんこ達は炭酸ガスで苦しみながら死んでゆくのに。
たかが犬。されど犬。
馳星周の介護は本当に凄い。
歩けなくなったマージをラジオフライヤ―に乗せて散歩し
イネイト療法なるペンダントをマージの頭上で回し続け(電磁波が出るらしい)こんなの?
食事はケーナインを毎日手作り食べたと言っては喜び食べなかったと言っては悲しむ
さすがに軽井沢に家を造るなんてことは一般人の私には到底無理だけど、きっとできる限りのことはするんだろうな。私は自分の犬を失うのが怖くて怖くてしょうがなくて犬種を選ぶ際もできる限り丈夫で長生きする犬を選んだような奴だからこの恐怖は常に付き物、自戒の意味も込めて一年に一度はしっかり読み直すようにしよう。
犬と暮らすのに必要な責任と愛情そして覚悟。
マージの優しい、穏やかな笑顔が大好きだ。そんなふうにマージを笑わせるためなら、どんなことだってできるという気になってくる。癌が酷くなっても、老化がますます進んでも、いつでもそばにいてやる。だから、笑っていてくれ、マージ。
- 作者: 馳星周
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/06
- メディア: 単行本
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犬のために生きるのも悪くないかもしれない。