犬たちを救え!

1日の終わりには いつだって暗くなる

犬たちを救え! ――アフガニスタン救出物語

犬たちを救え! ――アフガニスタン救出物語

イギリス人男性、ペン・ファージング。王立海兵隊員として20年以上のキャリアがあり、趣味はクライミング
2006年アフガニスタンに派遣された彼は闘犬に使われていた耳も尻尾も無い犬と出会い、その犬を「ナウザート」と名付け基地内で保護をする。タリバンから絶え間なく攻撃が続き、緊張の連続である職務と寝袋(通称:時間加速器)の往復という非日常の状態のなかで、食餌を与えたり遊んだりドッグランを作ったりする「日常」は母国に2匹の愛犬を残してきた著者にとってかけがえのない時間となる。

もちろん、野良犬を基地内で匿うことなど上司に咎められたらそれまでで、輸送に軍用機は使えない。そんな八方ふさがりのなか、ドッグランに行くと知らない犬が増えていたり、ヘビに噛まれた犬を見つけたり、妊娠した犬がやってきたりと何故か保護犬が増えてゆく。

ここがイギリスであれば、RSPCAに一本電話をかけるだけで、何人ものボランティアがまるで魔法のように姿を現すはずだ。わたしがいまいるこの場所はそうした世界から何万キロも離れている。

が、この本の魅力は大変だ!という困難なだけの本ではないというバランス。個性的な軍の仲間たちやクリスマスなどのイベント、現地のANP(アフガニスタン国家警察)との軋轢や友情。うまく行かないレスキュー作戦、犬との絆、見つからないトラック運転手、生まれる子犬、子犬救出作戦、そして迫る帰国の日。ドキドキハラハラのノンフィクションは犬を通して、アフガニスタンという国の文化の違いや我々と変わらないところを知ることができる。

One Dog at a Time: Saving the Strays of Helmand - An Inspiring True Story

One Dog at a Time: Saving the Strays of Helmand - An Inspiring True Story

著者は帰国後「ナウザート・ドッグス・チャリティ」という動物保護活動を開始し、動物を保護したい兵士のサポートやシェルター運営TNVR活動(猫で一般的なTNR:捉え不妊手術し戻すにVaccinate:ワクチンを加えたもの)を行っている。助けを求めている犬はアフガニスタン以外にも沢山いる。けれども、すべての保護活動の根底にあることは目の前のこの犬を救いたいという純粋な情熱なんだと思ってみたり。本書の売り上げの一部も貢献しているそうです。
Nowzad - winning the war for animals

ここからはネタバレ。
特に後半の追い込みが凄い!まるでミステリー小説のようにページをめくるのが止まらない状態に。ナウザートとジー*1の結末に喜び、RPGやAKに切ない気持ちになる。一番好きな章は15章、そういうリアルな心の動きが素敵な本でした←あのときにナウザートがいなくなってたらこの結末も無いわけで。

こちらはアメリカ軍の兵士と犬ラヴァ@イラクのおはなし。同じように様々な葛藤があったり*2

戦場で出会った子犬の物語

戦場で出会った子犬の物語

*1:まさかそうなるとは!会いに行って欲しいなー

*2:助かるかどうかのドキドキ度は似たようなもんですが、こっちは心情メイン