縦横無尽の文章レッスン

良い文章は、いわゆる上手な文章とは別物だ。

縦横無尽の文章レッスン

縦横無尽の文章レッスン

これ以上ないほどピッタリな題名。まさに「縦横無尽」に「古今東西有名無名」の文章を教材にした授業。良くある新書のような「伝わる文章の書き方」だとか「文章技術を上げる!」といったテクニックを重視したタイプの本に非ず。
大学で教員をしている著者から、まるで講義を受けるような構成で本は進む。この形式がとても良い、前後に挟まれるエッセイが自然あふれる下関の季節や穏やかな空気を伝えてくれて、肩ひじ張らず素直な心の状態で授業を受けることが出来る。
例題となっている文章は小学生の作文から詩、評論、童話など様々。まるで、なんでも鑑定団の鑑定士中島さんみたいに「ここが良いですねェ〜」と具体的に良い文章を褒めて教えてくれるからこっちも「なるほど〜」と納得できる。良い文章と悪い文章をハッキリ分けてしまうのではなく、良いとして出したテキストに対しても「ここは(私は)イマイチ」という部分もあったりして人間味を感じます。どんな文章に対しても著者自身がフラットに向き合っているからフェア。
そしてこのレッスンは文章を読み解くことだけではなく「書く」ことも重視している点が大きな特徴。理屈の捏ね方や筋の通った文章の書き方、考察を深くする為に必要なこと、翻訳による印象の違い・・・何が良いのか、どこが良いのか「目の付けどころ」を鍛える興味深くて豊かな授業。受験に役立つかは分かりませんが、生きてくうえではいつかきっと役立つ本。上からではなく横から文章の楽しさをこっそり教えてもらったような気持ち。
表紙に描かれたイラストも読めば納得!大変に愉快な読書でありました。