困ってるひと

人間は自分の主観のなかでしか、自分の感覚の世界でしか生きられない。

困ってるひと

困ってるひと

勧められて買ったものの、なかなかはじめの1ページ目を開く勇気がなくて*1さわりだけでも読んどこうかとページをめくれば、これが予想と違ってヘヴィーな話をむちゃくちゃライトに面白可笑しく、リアルに七転八倒五里霧中、一進一退生きてゆく様子を赤裸々に綴った本気の生存記録だった訳です。そのまま一気に一夜で読み続け、挙句の果てに陳腐な感想を述べる気にもならず1回目は読了したのですが、最近、自分がちょっとめんどっちい病(この本と比べてしまうとおおよそ街に溢れるほとんどの病が足元にも及ばないんだけど)を患いまして、何件か病院をハシゴする合間に待合室で再読することができました。それにしても病院ってなんで予約してあるのに半日も待つんだろうね?

内容は色々なところで散々書かれていると思いますが・・・ビルマの難民問題を大学院で専攻していたビルマ女子がある日突然、自己免疫系疾患、いわゆる難病にかかり文字通り難民となってこの国、日本を生きてゆく過剰にリアルなノンフィクション。1984年生まれというと自分とそんなに年齢が変わらないはずなのになんて強いヒトなのだろう。「絶望はしない」と言いきれる強さが自分にあるのかと問われるとゴニョゴニョ語尾を濁したくなります。果たして、そんなにも強く生きることへ執着できるんだろうか私は。

結構厚みがある本でしかも内容が内容なのに、読み進めるのが苦痛にならないのは、その時々の感情がとても素直に率直に書かれているから。病と向き合いながらも素晴らしい出会いに感謝したり、ユーモラスに笑い飛ばしたり、逆に終わりの見えない治療に鬱々とどん底まで落ち込んだり。人を頼り過ぎてると反省したり、信頼しすぎた人の心無い一言に深く傷ついたり、恋をしたり。体験型ルポタージュというと失礼だと思うけど(だって望んだ訳じゃない)自分で調べる力のある自立した若者は、行政や病院のありかたや理想と現実までも自分の意見をしっかりと持ったまま切りこんでいくんだから、そりゃースリリング。

健康は宝だと思うと同時に*2
困ってるひとが少しでも困らなくてすむような制度や社会を作ってゆくことが必要。それも早急に。と思った読書。

*1:というのも、闘病記というやつは自分の心に余裕が無いととてもじゃないけど読めるものじゃない

*2:誰だって麻酔無しで筋肉切り取られたくないよ…