墜ちてゆく男
殺人者と犠牲者のどちらもが神の名を叫んでいるなんて。
- 作者: ドンデリーロ,Don DeLillo,上岡伸雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/02/01
- メディア: 単行本
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以下、内容に触れます。
世界貿易センタービルから生還した男は別居中の妻と子供のもとへ戻る。脱出時になぜか手にもっていたアタッシュケースをきっかけに1人の女性と知り合い、共通の記憶を持つ2人は徐々に関係をもつようになる。基本的な筋書きはこんなストーリー。多くの視点から語られるので「この彼(彼女)はいったい誰やねん」となりながらも手探りで進んでいくようなちょっと骨の折れる読書でした。
主人公キース、妻、息子、妻の母親、その母親の彼氏、記憶を失うまいとする老人たち、ポーカー仲間。テロによって知り合うこととなったフローレンス。そこにテロの実行犯の青年や落ちる男(Falling Man)としてその瞬間をパフォーマンスする男などのカットが巧妙に割り込まれている。それぞれがそれぞれの立場で。
ニュースを受け止めきれず*1自らの物語を作り出す子供たちの遊びや神出鬼没で人々に何かを伝えるFalling Man、などどこか不穏な空気を感じさせる作品、そして「記憶」が大きなキーワードになっている本。記憶により傷つき、記憶に苦しめられ、記憶を愛し、記憶と共に生きる。はじめのうちは数ページづつしか読めなかったのに最後は空が白んでいることに気が付かないほど一気に。とりわけ最後のアタックのシーンは凄い。語彙が少ないのは承知のうえで、こんな体験は他ではない。
最後の方Falling Manの説明があるんだけど、見たような見てないような曖昧な記憶しかなくて。読み終わったら写真は見なくちゃと思って、やっぱ見れないと思って、でもやっぱり思い直して見る。googleで1クリックで検索できてしまう。落ちる男。写真に写った時は生きている人が数秒後にはこの世にいなくなっている写真。彼自身ではなくこの光景を意図的に繰り返すパフォーマー、デイヴィッド・ジャニアックこそがこの本の題名な訳だけど。そうか、この3章はみんな人名なんだね。
なによりも驚いたのは本の中で盲導犬ロゼール*2に会えたこと。
Thunder Dog: The True Story of a Blind Man, His Guide Dog, and the Triumph of Trust at Ground Zero
- 作者: Michael Hingson,Susy Flory
- 出版社/メーカー: Thomas Nelson Inc
- 発売日: 2011/08/02
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ロゼールが立ち去った現場を数時間後にベアが歩く。
救助犬ベア―9.11ニューヨーク グラウンド・ゼロの記憶 (ノンフィクション 知られざる世界)
- 作者: スコットシールズ,ナンシー・M.ウェスト,Scott Shields,Nancy M. West,吉井知代子
- 出版社/メーカー: 金の星社
- 発売日: 2005/12
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