池澤夏樹の旅地図

ぼくらが旅に出る理由

池澤夏樹の旅地図

池澤夏樹の旅地図

池澤夏樹は(物理的に)一カ所にとどまり続けない流浪の作家である。帯広に生まれ東京に育ち、ミクロネシアを訪れ、ギリシャで暮らし、その後も沖縄、パリ〜と定住せずに旅は続く*1。日本と折り合いの悪い作家がいかにして世界と折り合いをつけるかの考察を主軸に、常にここではないどこかを求める「異国の客」で「帰りそびれた観光客」な人の旅にまつわるエトセトラ。
旅に関する文章やインタビューや寄稿文や幼少の記憶。旅エッセイではなく旅に対する考察。ハワイイ紀行を読んだ時から気付いていたけれど行き当たりばったりじゃなくて非常に用意周到な緻密で文化的な旅。地図へのこだわりや矛盾が面白い。視点がしっかりしてるからブレが無い。この人は文化への興味、もっと広く言えば人間に対する愛が強いんだよね。考えたではなく考え続けている部分が好きなのかも。そーれにしても、この本は厚い・濃い・そして高いw

幼い日々の記憶はなんとなくこの前読んだ柴田元幸氏の本とリンクしたり。あれも旅を主題にしたものだったし無意識に旅心を誘われてるのかも。

*1:今はどこにお住まい?