チベットを馬で行く
- 作者: 渡辺一枝
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1996/07
- メディア: 単行本
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その道を馬で行った前例はなく、大冒険と言ってもいいような内容なのにあくまでチベットの暮らしや文化や風習を知ることに重みを置いている。そんな身の程をわきまえてるというか、謙虚な感じが素敵だ。だから荷物はトラックが運んでくれるし、お昼ごはんもテントもお任せ。なんでも自分でという旅じゃないからこそ、無理をしすぎず風景や空気感を捉える余裕が出来たのかもしれない。冒険を絶対にやり遂げるという意識に縛られずに済んだからこそぶらりと遊牧民の家にお茶に誘われたり、その場でのコミュニケーションを優先できた。
本を開くたびにイチラ*1と仲間たち(ツェワン・テンバ・タリン・トゥンドゥプ)と馬(ティングリ・ナラン・ティンケルハヤ)に乗りながら一緒に旅をしているような気持ちになる。バター茶を飲みながら、その高原を行くような気持ちになる。思い通りにならなくてイライラしたり、くだらないことでウッケケケと笑ったり、数えきれない喜怒哀楽と幾多の出会いと別れ、文章は淡々としながらも心はまっすぐで素直だ。22年経て今のチベットはここに書かれたものとだいぶ違っていると思う。変わらないでいてほしいというのは傲慢かもしれないけれど、せめて無くさないでいて居てくれたら嬉しい。
読み始めてすごい本だなと思い。読み終わって本ってすごいなと思いました。
*1:渡辺一枝