さまよう刃
加害者の人権は被害者の人命よりも尊重されるべきものなのか?
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/05/24
- メディア: 文庫
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ミステリーなのでたたみます。
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ネタバレ有ですよ。
読みやすい。本当に読みやすい。ストーリーに読ませる力があるというのも理由だけど、表現とか言い回しもすさまじくわかりやすい。今一緒に読んでる本がコーマック・マッカーシ―と司馬遼太郎だからなんだろうけど(特に越境は10ページ読んだだけでも疲労する)けっこう厚みがある本なのにさくさくと3日で読了。先に言っておくと取り立てて東野圭吾のファンという訳ではなく10冊は確実に読んでるけど20冊は微妙なライン。
後味の悪い作品だった。
結末が。というのもあるけれど、東野圭吾ってこんな軽い感じの作家だったっけ?と疑問に思うこと多々。一方的で感情的すぎるんだよね。一応刑事や犯行を止めようとするキャラクターを出したりして中立のように見せているけど、あくまで東野圭吾の意見としてはひとつの答えしか出していない様に感じた。司馬遼太郎の乃木希典に対する評価のように資料を使ってたたみかけるように説得されるのではなく感情論で一気にまくしたてられる感じ。
少年法に守られている救いようのない屑の人間という描写があまりにもストレートで携帯小説じゃないんだから・・・とちょいと思う。白夜行のあとがきで馳星周がノワール小説と絶賛していたけれど、これがノワールではないのは動悸がピュアすぎるんだ。トリックといえるトリックも謎の電話ぐらいで和歌子の子供とか鮎村とか伏線になるのかと思いきやあまり確信には絡まずに終わっちゃったし。
こんな東野圭吾ファンに怒られそうな感想を上げているのはやっぱりラストが気に食わないから。ああなることは大体予想出来たけどそりゃないよーという読後。女子高生コンクリート事件とか、猫のこげんたとか、フレンチブルの百代とか名前を聞くだけでどんよりと気分が悪くなり、やるせなさでいっぱいになって、最後の1クリックでバーボンハウスに繋がっていてほしいと心の底から願うような事件が実際に起こっていて。それらの事件に接して無力感でいっぱいの私はせめてフィクションの中だけでも思いつく限りの凄惨な方法でカイジに罰を受けさせたかった。
自分たちが正義の刃と信じているものは、本当に正しい方向を向いているのだろうかと織部は疑問を持った。向いていたとしても、その刃は本物だろうか。本当に悪を断ち切る力を持っているのだろうか?
さまよう心に触れて