Springsteen & I

Thank you BOSS!!

スプリングスティーン & アイ【Blu-ray/日本語字幕付】

スプリングスティーン & アイ【Blu-ray/日本語字幕付】

今年見た映画*1のなかでぶっちぎりの1位。はじめてこの映画を見たのはWOWOWだったと思う、途中からなんとなく見始めて見終わる前にはamazonで注文完了。そのぐらい衝撃的だった。もちろんそんな経験は初めて。

ホームビデオやインタビューで、国も人種も性別も年齢や職業おかれた境遇が異なる人々がそれぞれの記憶を語る。共通しているのは「ブルース・スプリングスティーンについて」ということ。これはブルースの映画でありながら主役となるのは彼のファンたち。そしてその言葉に導かれるようにインサートされる様々なライブ映像。

アメリカの屋台骨を支えるトラック運転手のおねーちゃん、母親から英才教育を施された少年、20年越しの夢が叶った男性、1985年から毎日聞いているけれどコンサートには行ったことのない女性、路上で15分17秒セッションをしたことを一生の誇りにしているストリートミュージシャン、リビングでブルースのことを毎晩語り合っている夫婦、、、

長い年月をブルース・スプリングスティーンの音楽とともに過ごしてきた人々。
私の知らないとところで、私の知らなかった曲が、私の知らない人の人生を支えている。そんな当たり前のことを目の当たりにして感動してしまう。そもそも、ただの透明な嗜好品に過ぎない、コンパクトディスクにやかれたもの、今の時代となっては形ですらないデータに過ぎないもの。でも、自分を含めてこの地球上でどれだけの人がこの音楽に助けられ、支えられ、救われたのだろうという気持ちになった。たかが音楽じゃないかと思う人もいる、でもそれが「されど」音楽な人にとって*2、この映画はなにかの啓示のようなものを与えてくれる。
なんだ、ファンが崇めあう褒め称えあう映画か…そんな風に思ってスルーしちゃうのは大きな損で。あんまりよく知らないし、マニアックな話にはついていけないな…なんて思うのはもったいない。私自身、好感は持っていたけれどファンだと胸を張って言えるほど詳しくもなければ、いくつかのアルバムと有名な曲(Born to RunとかThunder Roadとか)を知っているだけに過ぎない。だけど、いやだからこそこの作品には深く感動した。むしろ、ファンにとっては不満の残る内容かも・・・ズブズブのどっぷり浸かったファンであればあるほど「見たいのはファンなんかじゃなくてボスなんだよ!」と思うに違いない。それはたぶんきっとささやかな対抗意識と嫉妬心を含みながら…それを踏まえて今さらながらに謝っておく。ライオネルごめんね、こういう映像が撮りたかったんだよね。

ブルーススプリングスティーンのファンであるということが、どういうことか良く分かったよ。

この映画をみながら「ファンってなんなんだろう?」と何度も思った。
勝手に好きになって、知らないうちに去っていく*3ファン。健気で、ワガママで、愛情深く、献身的で、自分勝手なファン。
最近の日本の芸能界での騒動もどこかに引っかかりつつ、この「ファン」という自己認識はなかなかにやっかいだ。最近はインターネットやSNSのせいでライブの回数をこなすことがイコールそのままファンとしての熱量に換算されがちな世の中ではありますが(誤解の無いように言えば回数を重ねる方はその分お金も労力もかけてるし、その点については疑いようもない)、ただそれが全てのモノサシには決してなりえないよな。とこの映画を見て改めて再確認した。やっかいだとしてもそれ以上に「ファンっていいなぁ」と無性に思う。報われないことも多いし、楽しいだけでは無いけれど、それでも誰かのファンで在るっていいなぁー!と心底思った。

それは私の物語の一部となり 人生のサウンドトラックとなっています。

それにしてもこの映画、ブルース本人のインタビューはないのにもう完璧なぐらいに格好良い。もう、むちゃくちゃに格好良い。コレ見ちゃったらみんなファンになっちゃうぐらいにパフォーマンスも対応も言葉も格好良い。1度でいいから絶対にナマで見たい。あとね、最後のBorn to Runが素晴らしすぎてこの文打ちながら20回ぐらい繰り返し見てる。圧倒的過ぎて泣きそうになる。

普段は決してフォーカスされることのないひとりひとりのファンを通じてブルーススプリングスティーンの魅力を語られる、
大変に幸福感に溢れた素敵な映画でありました。

*1:映画?ドキュメンタリー映画??

*2:いや、音楽に限った話ではないのかもしれない

*3:たまに去っていかないw