猫を抱いて象と泳ぐ

最強の手が最善とは限らない。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

これ以上ないぐらいピッタリな題名。
小川洋子という人は、チェスとか数学とか物語にすることがいかにも難しそうな題材を見事に小説という世界で表現する。私の知らない世界でひっそりと慎ましく、優しく、けれどそうしなければならない人、そうしなければ生きられない人を描く。繊細で個性的で愛すべき登場人物たち。ルールがわからなくても美しくて正確なチェスの世界をちょっとだけ覗ける。
どこまでも穏やかで楽しいマスターとポーンとの日々が特にいいな。幼少期の愛された記憶は人生を左右する。