村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

およそ100年前のトルコ、スタンブールを舞台にした村田エフェンディ(学問を修めた人に対する総称)の愉快で大変で慎ましく豊かな日常。
下宿先のディクソン夫人、国籍も様々な下宿人たち、そしてオウム。日本人が来れば懐かしさに喜んで出迎え世話を焼き、部屋の中で神々の闘いに演説をする、宗教の違いに戸惑い、友の優しさに触れる。
完全にリラックスは出来ないどこか気を張ったような、だけどそれが決して嫌ではない刺激的な異国での生活。最終章を読むと失われた時間の美しさが一層胸に迫る。宮本輝彗星物語*1にも似たようなこの切なさ。異国情緒溢れる本、けれど決して人間の本質は世界中どこも変わらないのだと思わせてくれる本。

*1:

彗星物語 (文春文庫)

彗星物語 (文春文庫)

この本も大好き!