ダックコール

私は稲見一良が好きだ!

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)

・・・と誰に向けてだかわからないけれど、宣言したくなるような本でした。
セントメリー、猟犬探偵は犬モノの本でしたが、こちらは鳥モノの短編集。好都合主義で何が悪いとばかりの登場人物がむちゃくちゃ格好良く、タフで寡黙な優しいハードボイルド。前々から思っていたけど稲見一良は、自分の好きなものをまっすぐ描くのが本当にうまい。そして鳥に対する慈しみと自然に対する敬意が伝わってくる文章。
ベストはなんだろう?中年男性と少年の絆を見事に描き切った「密猟志願」、アメリカを舞台に日系二世が活躍する「ホイッパーウィル」はラストに思わずため息、デコイの一人称と言う珍しい形式「デコイとブンタ」は終盤の鮮やかな風景が目に浮かびまさにお見事!うーん、どれも選べない・・・でも、これから何回も読み直すだろうなって本。
「波の枕」の最後が稲見一良の自身の言葉のようで少しうろたえた。そして、そうであって欲しいと祈った。