戦争手記
今週の読書
軍犬ローマ号と共に―ビルマ狼兵団一兵士の戦い (光人社NF文庫)
- 作者: 志摩不二雄
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 文庫
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軍犬ローマ号は表紙写真の通り右耳の欠けたジャーマン・シェパード。
軍犬部隊に所属していた著者の相棒であり、ビルマのジャングルの中、部隊と離れてしまった74時間片時も離れず勇敢に任務を全うした犬です。といってもこの本の主人公は軍犬ローマに在らず。間違っても軍用犬の習性やら生活やらは出てこずもちろん訓練なんてもっての外。
作者の実体験に基づく手記という印象。いや手記でもないな、なんかおじいちゃんの日記帳(しかも若かりし頃の感情ぶちまけ日記)を盗み読みしているような気分だった。
メインは戦争の話だからやっぱり凄惨な出来事が多い。でもその時の感情が生々しく書いてあって今の自分の考えなどに逃げないのでとてもリアリティがあった。人間年をとると過去をやたら美化したり逆に後悔したりっていうのが出てくるけれど、この本はまるで今起こっているような書き方。平気で(敵であっても)殺してゆくところやなんでもなく売春してるのもたぶん今の感覚に合わせて書いたりしていないからなんだろうな。ゆえに著者への共感ができずどちらかというとあまり良いイメージが持てない。なにより一番感心したのが上等兵にされた虐めの復讐(ってそんな生易しい事ではなく本気の殺意)の為に生き抜く執念深さ。なんだか個人的すぎてちょいと離脱しそうでしたわ。
とにかく兵士同士の友情とか部隊の統率力とか軍用犬への信頼とか。そんなお涙ちょうだい感動本とは程遠い本。まぁ戦争を題材に感動するなってメッセージだとしたら凄いけど。ちょいとネタばれ→軍用犬の体からウジ虫が発生したり、現地人レイプしたり、最初から最後まで恨み節だったり読んでて楽しいものではないけれど・・・でも読んで楽しい戦争ってなによ?
かっちょいい軍用犬セパードの話が読みたければ古川日出男の「ベルカ、吠えないのか?」をお勧めします。犬喋ったりしてるけどカッコいいです。うぉん。
軍用犬を語る上で必要な事実はこれだけだとも思う。
兵士は復員したが、軍犬は一頭も帰還していない。
ビルマの地に眠るローマ号に合掌。